Dr.さむらのハイパー気まぐれ日記

さむら脳神経クリニックから脳の健康について書いていくつもりですが・・・。

黒人はMRIは撮れない?

初めての方の場合、MRIを撮影する前には問診をお取りします。

体に金属は入ってないか? ペースメーカーは入ってないか? 貼付剤は使用してないか? タトゥーは入れてないか?等々、安全にMRI検査を行うために必要なチェック項目です。さむら脳神経クリニックのMRIは、磁場もさほど強くありませんので特に問題はありませんが、以前高磁場MRIを使用していた時は、「お化粧は落としてきて下さい」と言う注意もしてました。これも細かな磁性体成分によるヤケドや皮膚表面の損傷の危険性がなきにしもあらずであったからです。

でもよくよく考えてみると、鉄をはじめとする磁性体は、人間の体内にだっていくらでも存在します。まず血液。血液中で最も多い成分は何と言っても赤血球ですが、酸素を運搬するための成分であるヘモグロビンのコアは鉄ですし・・・。勿論血液はビュンビュン流れていますので、血中のヘモグロビンを考えに入れる必要は無いと思いますが、例えばそれが局所的に集中して固まった状態がおきれば、そこには鉄が高密度に存在することになるはずです。

とすると、脳出血などである領域に血液が集中して固まった状態では、その部分の鉄の濃度が高くなっているはずですが、血管内に漏れ出したヘモグロビンは次第に酸化され、デオキシヘモグロビンからメトヘモグロビンを経て最終的にはヘモジデリンという酸化鉄に変化します。MRIの画像では、前回お示しした金属片によるアーチファクト同様黒く抜けて見えてきます。

赤い矢印で示した病変は、海綿状血管腫と言ういわゆる一つの血管奇形です。

黒人はMRIは撮れない?


黒人はMRIは撮れない?

病変の外周が黒く抜けているのは、古い出血がヘモジデリンの層を形成しているため画像上そう見えているのです。

磁場が集中する部分に磁性体の塊があるわけですが、この状態でMRIを撮影しても何ら問題はありません。と言うか、海綿状血管腫の存在は、MRIを撮らなければ分かりませんし・・・。

ヘモジデリンが脳表に沈着する脳表ヘモジデリン沈着症と言う疾患や、体全体にヘモジデリンが沈着するヘモジデローシスと言う疾患もありますが、MRI撮影前の問診で「あなたは脳表ヘモジデリン沈着症ですか?」等とは聞きません(これも撮らなきゃ分かりません)。

赤血球関係以外で生体内に鉄が集中して存在する場所と言えば、思い浮かぶのはメラニンです! メラニンが集中する場所と言えばホクロですが、やはりMRI撮影前にホクロはありますか?などとは聞きませんしMRIでホクロがヤケドしたって話も聞いたことがありません。更には、黒人は皮膚のメラニン含有量が多いと考えられますが、MRI撮影前の問診で「あなたは黒人ですか?」とは勿論聞きませんし(見たら分かるし!)、黒人はMRIを撮影出来ないという話も聞いたことがありません。生体の有機化合物と無機化合物であるタトゥーの色素では、同じ酸化鉄でも話が違うってコトは重々理解した上で言わせて頂きますと、相変わらず極端な理論構築で申し訳ありませんが、アートメイクにしてもお化粧にしてもあまりナーバスにならず、この程度のお話だとお考えになっては如何でしょうか?




vol.24
患者さんについて求めること

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この記事へのコメント
またまたとても勉強になりました!
何度も何度も読んでやっと納得したところです^^;
難しいですけど。。。

メラニンって鉄が集中しているんですか~!
考えてみたらそうですよね。

ちなみにヘム鉄飲みまくっていますが
胃の中でカプセルが溶ける前にMRIに入ったら…怖い…

それからアートメイクの色素が有機化合物or無機化合物で
どちらが安全性が高いか、という議論もアメリカではありました。
ほとんどの色素が無機化合物なんですが。


問診表やスタッフの質問で、アートメイクしていますか?
ってほとんどの病院で聞かれますものね。
人間の体には100パーセントはないから難しい所ですが。。。
看護士さんや女医さんも、お客さんとても多いんですけど。
たくさんの方にさむら先生のブログを読んで頂きたいですね♪
Posted by archarch at 2010年11月05日 23:38
samura先生 こんばんは

友人が、頭痛で困っていて、質問を受けたのですが、よく分からなくて、「脳圧」を検索していて、先生のブログに辿り着きました。

とても丁寧に説明してくださっていて、感動しています。

教えていただきたいのですが・・・
友人(現在77歳です)は、25年前に、くも膜下出血でクリップ手術を受けました。
疲れると頭痛がするらしく、(本人は、脳圧が上がっているト 理解しているらしいのですが・・・)今回は、5日ほど頭痛が続いていて、
「OTCの、ナロン錠では効かない。他に効く薬はある?」と電話がかかってきました。
ボルタレンやロキソニンの名前が頭をかすめながらも、「病院に行かれないのですか?」と、まず、勧めたのですが、
以前、同じように頭痛が続いて、手術を受けた病院を受診した時に、「手術は完璧だったから心配はいらない。疲れないように生活態度を改めること。」と注意を受けて、鎮痛薬の処方はなかったので、行きたくないと・・・。(とりあえず、CTはとっておきましょうとCT検査はされたそうですが・・・)
確かに、いまだに超多忙な人なので、医師から注意を受けるのもうなずけるのですが・・・
結局、ナロン錠がなくなって、ノーシンをもらって飲んでみたら、少し楽になったと、昨日聞きました。

今後、頭痛がひどくなった時には、どうしたらいいんでしょう?
起床時に痛むという特徴はなく、一日中痛みがあり、脈打つような痛みなのだそうです。
Posted by myanta at 2010年11月05日 23:54
samura先生 こんばんは

昨日、質問を送らせていただいたのですが、
本当にすみません。

たまたま予約していた整形外科で、頸部に、ヘルペスをみつけていただいたそうで、かかりつけの内科で、抗ウイルス薬とロキソニンを処方していただいたそうです。

お騒がせいたしました。

友人のことが心配で、(汗って)焦ってしまいましたが、おかげで、先生のブログに出会えて良かったです。

的を得ない質問で申し訳ありませんでした。
Posted by myanta at 2010年11月06日 19:21
archさん、おはようございます。
コメントもありがとうございます。

私も「入れ墨してますか?」って聞いて「私のは入れ墨ではなくてタトゥーです」って答えが返ってきたこともありました。「同じでは・・・?」と思ってたこともあるのですが、彩り豊かな倶利伽羅紋紋の方が色素の磁性体含有率が高い(つまりヤケドの確率が高い)様で、今回私も大変勉強になりました。ありがとうございます。
Posted by samurasamura at 2010年11月08日 08:59
myantaさん、ご訪問コメントありがとうございます。

ご友人の頭痛の原因が分かって何よりでした。確かに脳圧が上がっている場合は、朝痛むコトが多いですね。また脈打つような痛みの場合は、血管性頭痛(つまり片頭痛)の可能性が高いですし、多忙による緊張型頭痛が血管性の痛みまで引き起こしている可能性も考えられますから、ドクターが「疲れないように生活態度を改めること」と注意されるのももっともだと思います(疲れないような生活態度というモノがあったとしても、仕事が忙しすぎると無理かも・・・)。

25年前のクリップは、おそらく磁性体で出来ていると思いますので、MRIを撮影するとアーチファクトで黒く抜けると思います。

ヘルペスが良くなっても頭痛が続くようなら、緊張型頭痛に準じた治療で頭痛の頻度を少なくしたり痛みの程度を和らげたり出来ると思います!
Posted by samurasamura at 2010年11月08日 09:24
 
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コメント

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