Dr.さむらのハイパー気まぐれ日記

さむら脳神経クリニックから脳の健康について書いていくつもりですが・・・。

肺がんが脳に転移しやすい理由とは?

がんは、がんの中でも特に脳に転移しやすいことで知られています。がんの脳転移全体の中で最も多いのが肺がんであり、これは肺がん患者の治療や予後に大きく影響を与えます。では、なぜ肺がんは他のがんに比べて脳に転移しやすいのでしょうか?今回は、そのメカニズムや背景について詳しく解説します。

肺がんが脳に転移しやすい理由とは?


脳転移とは?
まず、脳転移について理解しておく必要があります。脳転移とは、体内の他の部位で発生したがん細胞が血流に乗って脳に到達し、脳内で増殖することです。これにより、脳内に腫瘍が形成され、さまざまな神経症状を引き起こすことがあります。脳に転移したがんは、転移性脳腫瘍と呼ばれ、脳そのものに発生する原発性脳腫瘍とは区別されます。

脳に転移するがんの中で最も多いのが肺がんであり、特に進行した肺がんでは脳転移のリスクが高まります。この脳転移によって、頭痛やめまい、視覚障害、運動機能の低下、さらには意識障害や痙攣発作といった症状が引き起こされ、患者の生活の質や予後に大きな影響を与えます。

肺がんが脳に転移しやすい理由とは?


肺がんが脳に転移しやすい理由
では、なぜ肺がんは他のがんに比べて脳に転移しやすいのでしょうか?その理由は、主に以下の3つの要素に集約されます。

1. 肺の血液循環における重要性
肺は体内の血液を浄化するフィルターのような役割を果たしており、全身からの血液がまず肺を通過して酸素を受け取り、二酸化炭素を排出します。このため、肺は全身の血液が集まる非常に重要な臓器です。

がん細胞は、血流を通じて体内を巡りますが、通常、他の部位で発生したがん細胞は肺に堰き止められることが多いです。これは肺が「フィルター」として機能するためです。しかし、肺がんの場合はこのフィルターの外側、つまりフィルター自体に発生するため、他の臓器と比べてがん細胞がフィルターで堰き止められることがありません。このため、肺がん細胞は血流に乗って全身に広がりやすいのです。

血流に乗った肺がん細胞は、特に血流が豊富な臓器、つまり脳に到達しやすく、そこで増殖を始めます。これが、肺がんが脳に転移しやすい大きな理由の一つです。

2. 脳と肺の血流の関係
脳は体内でも特に多くの酸素と栄養を必要とする臓器であり、そのため血流が非常に豊富です。脳への血液供給が多いということは、がん細胞が血流に乗って脳に到達しやすいということでもあります。

肺がん細胞は、血液に乗って全身を巡る中で、特に血流が豊富な脳に到達する確率が高くなります。さらに、脳はがん細胞が増殖しやすい環境を持っており、栄養と酸素を必要とするがん細胞にとって、脳は格好の場所となります。

脳には血液脳関門という防御機構がありますが、一部のがん細胞はこの関門を突破して脳に侵入する能力を持っています。特に肺がんは、この血液脳関門を越えて脳に転移しやすいがんの一つです。

3. 肺がんの悪性度と転移のスピード
肺がんは、他のがんに比べて悪性度が高く、転移のスピードが速いという特徴があります。特に小細胞肺がんや進行した非小細胞肺がんでは、がん細胞が急速に増殖し、全身に広がる力が強いです。

このため、肺がんの進行が進むと、がん細胞が脳に転移するリスクが非常に高まります。進行した肺がんでは、発見時点ですでに脳に転移しているケースも珍しくありません。また、肺がんが脳に転移することで、がんの進行が加速し、患者の予後に大きく影響を与えることがあります。

肺がんが脳に転移しやすい理由とは?


肺がんの脳転移の症状
肺がんが脳に転移すると、脳内で腫瘍が形成され、さまざまな症状が現れます。代表的な症状は以下の通りです。

頭痛
脳内の腫瘍が圧迫や脳圧の上昇を引き起こし、特に朝方に強い頭痛が見られることが多いです。

めまい・吐き気
脳腫瘍が脳圧を高めることで、めまいや吐き気を伴うことがあります。

視覚障害
視神経や視覚に関わる脳の部位が影響を受けると、視力低下や視野欠損が生じることがあります。

運動障害
腫瘍が運動を制御する部分に影響を与えると、手足の麻痺や動作の鈍化が起こります。

意識障害・痙攣発作
症状が進行すると、意識障害や痙攣発作が発生することもあります。これらは緊急を要する症状です。

肺がんが脳に転移しやすい理由とは?


肺がんの脳転移の治療法
肺がんの脳転移に対しては、放射線治療、手術、化学療法、免疫療法などが行われます。治療法の選択は、腫瘍の数や大きさ、患者の全身状態、原発の肺がんの進行具合によって異なります。

放射線治療
脳全体に放射線を当てる全脳照射や、転移した腫瘍にピンポイントで放射線を照射する定位放射線治療(ガンマナイフ、サイバーナイフ)などが用いられます。特に定位放射線治療は、限られた数の腫瘍に対して効果的です。

手術
腫瘍が脳内で限局している場合や、症状が強く緊急を要する場合には、手術で腫瘍を取り除くことが検討されます。

化学療法・免疫療法
脳は血液脳関門に守られているため、一般的な化学療法薬が脳転移に効果を発揮しにくいことがありますが、近年では脳転移にも効果を示す薬剤や免疫療法が注目されています。

肺がんが脳に転移しやすい理由とは?


まとめ
肺がんは、脳に転移しやすいがんの一つであり、その理由は肺のフィルター機能をすり抜けて全身にがん細胞が広がりやすいことや、脳の豊富な血流、さらには肺がんの悪性度と転移のスピードにあります。肺がんが脳に転移すると、深刻な神経症状が現れることが多く、早期の診断と治療が求められます




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