Dr.さむらのハイパー気まぐれ日記

さむら脳神経クリニックから脳の健康について書いていくつもりですが・・・。

まるで若者!

基本的に水とナトリウムは一緒に動きます。水が出ていけばナトリウムを出ていきますし、ナトリウムが入ってくれば水も入ってきます。ナトリウムを多く摂取するってコトは、身体の中に水も沢山入ってくるってコトになりますが、ついでにカロリーも沢山入ってきます。

ナトリウムとカロリーは、手に手を携えてやってくるわけです。

が、これもちょっと横に置いておいて、今日は水とナトリウムが同時に動かない場合のお話を。それは、下垂体後葉から分泌されるバソプレシンと言うホルモンに関連します。バソプレシンは日本語では抗利尿ホルモンと言い、利尿(つまりおしっこを出す)作用に抗(つまり抑制)するホルモンです。つまり、おしっこを出さないようにするホルモンです。バソプレシンが出ることで、水分が尿として身体から逃げていくのを防いでいる訳なんですが、下垂体腺腫の手術などでバソプレッシンが出ない状況に陥った場合、抗利尿作用が無くあるわけですからおしっこじゃじゃ漏れ状態になってしまいます。これを尿崩症と言います。

人間の1日の尿量が1200cc程度としますと、1時間の尿量は50cc程になるはずですが、尿崩症の場合1時間で250〜300cc(場合によってはもっと大量)のおしっこが出てしまいます。いや、もうホントに、おしっこじゃじゃ漏れ状態になってしまいます!この時は水とナトリウムが同時に動かないため、おしっこは浸透圧の低い、薄い尿になってしまいますし、逆に血液のナトリウム濃度は上昇し血液の浸透圧も上昇します(ちなみに、血液の浸透圧を一番簡単に計算する方法は、血中ナトリウム濃度を2倍するコトです)。

で、尿崩症の治療には、バソプレシンを外から補充してあげればいいわけですが、注射液のピトレシンという製剤と、点鼻薬のデスモプレシンと言う製剤があります。

ある時、私が受け持っていた入院患者さんで、70代後半の高齢男性が尿崩症になりました。別に下垂体の手術をしたわけでもなく原因がよく分からなかったのですが、浸透圧の低い尿が大量に出て血中ナトリウムも高値となり、デスモプレシンでホルモン補充療法を開始したのです。ところがここで、思いもよらぬ副作用が出現してしまったのです。

尿崩症でおしっこがどんどん出ると身体の水分が減少しますから、強い口渇が生じ患者さんは水をがぶがぶ飲むことになりますが、そこに抗利尿ホルモンを補充すると今度はおしっこの量がグッと少なくなります。つまり身体の中に水が多くなりナトリウムが少なくなると言う、これなまでとは逆の状態(つまり水中毒)が発生してしまう可能性があるわけです。デスモプレシンの量を間違えると低ナトリウム血症となり、ひどい場合は意識障害やけいれん発作などを生じてしまいます。

いや、別に私がデスモの量を間違えたわけではありませんよ。わたくし外見と違って、ゴルゴ13張りに臆病な森の子ウサギちゃん的、石橋を叩いて 割る も渡らない的慎重派なんです。難しい薬剤を使う時は、少ない量から慎重に慎重に、徐々に量を増やして適量まで持っていくのを常としています。勿論今回の尿崩症の患者さんにも水中毒など全く発生せず、なんの問題もないかに見えましたが、その患者さんの場合バソプレシンがどこにどう作用したのか、EDが治って(?)しまたのです(驚)。

回診の時患者さんから、「若者のようにビンビンになってます」と言われた時、あたしゃ何が起こっているのか全く分かりませんでした・・・。




vol.24
患者さんについて求めること

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この記事へのコメント
放射線技師の就活(転職)中にたまたま拝見いたしました。
面白かった。患者さんが先生を信頼しているんだなと感じました。
良い先生なんですね。
楽しませて頂きました。
ありがとうございます。
Posted by 石川礼子 at 2010年08月21日 08:15
石川礼子さん、初めまして。
ご訪問、コメントありがとうございます。

楽しんで頂いてありがとうございます。またのお越しをお待ちしております!
Posted by samurasamura at 2010年08月21日 10:47
 
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