Dr.さむらのハイパー気まぐれ日記

さむら脳神経クリニックから脳の健康について書いていくつもりですが・・・。

没個性化

小学校5年生の時に、「家内制手工業」と言う言葉を習いました。「家内制手工業」は、工業が発展する上での最も原始的な形態で、工場制手工業から工場制機械工業へと進歩して行くにつれ、労働者は一人一人の個性が失われ(没個性化)まるで部品か歯車ででもあるかのように、生産ラインの中に取り込まれてしまいました。

なんだか現代の医療においても、そう言う側面があるような気がしてるんです。

ある疾患について何か言おうとしたとき、一人一人の患者さんについて話してもあまり意味を持ちません。その疾患を患った患者さんのグループについて、統計解析したりある治療を行った群と行っていない群とで比較検討することで結論めいたモノを導き出すわけです。今はやりのEBMやガイドラインも、多数の症例の治療結果を集積して、「Aの疾患の場合Bの治療では90%に有効であったが、Cの治療では50%しか有効性が認められなかった」等という結論が導き出されるわけです。私だって、例えば末梢性顔面神経麻痺では、「86%は完全に良くなりますが、6.3%に再発が見られそのほとんどは対側です」なんてよく言ってます。ピントが外れているかもしれませんが、そこには患者さん一人一人の個性というモノが欠落しているような気がするんです。

勿論科学の究極は、単純化、一般化だと言うコトに対しては否定は致しません。かの複雑で我々一般庶民にはとうてい理解不能なアインシュタインの特殊相対性理論であっても、最終的には

E=mc2

と言う単純な数式で表す事が出来るではありませんか(あんた単純化しすぎ!しかも意味わかってねぇし)。

要するに、ガイドラインに則ってやってりゃそれでいいってコトなら、医学部の卒業試験も通って国家試験も通ってきた人達には、そんなに難しいコトではないんじゃないかと思ったりするわけなんです。うまく言えませんが、「Bの治療法は、Aの疾患に90%有効です」とインフォームド・コンセントを取って治療を行った場合、もし効果が出なくても「残念ながらあなたは効果のでない10%の方に入ってしまいました〜。It’s so sorry.」で終わりなら、あまりにも即物的というか無機的というか短絡的というか心が通ってないというか・・・。

EBMやガイドラインも大切なんですが、「EBM偏重」「ガイドライン遵守」になっちゃうと患者さんを一人の人格として見ず、その疾患を患った集団の方ばっかりを見るようになってしまうのではと言う気がするのです。これは患者さんの没個性化に繋がるばかりでなく、医者自身の没個性化にも繋がるような気がしています。

「どこの病院に行っても同じコトしかしないし、どの医者に聞いても同じコトしか言わない」みたいな。ま、国民皆保険で、医療費はお国の統制下にあって全国一律同じですから、どこ行っても同じコト言うのが普通なのかもしれませし、今の日本じゃある意味正しい姿なのかもしれません。

あたしゃ納得しませんが・・・。




vol.24
患者さんについて求めること

同じカテゴリー(医療)の記事

 
この記事へのコメント
こんにちは。
確かに没個性化感じますー。それだとセカンドオピニオンの意味ないじゃんと思いますー。
私の知り合いも4箇所の病院を自分で転々とし、まあ多分納得のいく説明がなかったんでしょう、ションボリしてました。
「どこも同じ…」
って。実際は、ほんとうに同じ診断かもしれないし、ほんとうにその病名かもしれません。
でも、言い方というか伝え方というか、患者さんを”その気”にさせるというか…一番効果を発揮するのは医師の言葉だと思うんです。
そこが欲しかったのかな、この人は。
このお医者さんなら納得、これからも安心・信頼して通うし通いたーい!
って思える病院を探していたんでしょうね。

というわけで先生のご意見に激しく同意です。
今日は個性を出してからあげ弁当ではなく特からあげ弁当にしてみました。
Posted by 特から at 2010年03月25日 12:56
まぁ、ですから100人に一人というけれど、

100%アンタという理解も必要かと、、、。

 ところで、個性ですが養老先生によれば、

「キズ」という理解が正しいかという話がありまして、

私もそう思います。

 でっ、フツーというのは「普通」というコードに憧れる、

80%の人達をいうようです。

ですからフツーはフツーでない人の方が多いというのが、

個性の要因かと、、、、。


            カワウソ
Posted by ネコとウソネコとウソ at 2010年03月25日 21:55
特からさん、ご訪問・コメントありがとうございます。

医者の言葉は大切ですね。「言い方というか伝え方というか」は、ホントに難しいし、「A」の内容を伝える為に「A」だけ話しても伝わらない事もしばしばですし、「B」や「C」の話をしてから出ないと「A」が理解しにくいってコトもありますし。

ブログの記事にしても、言いたい事をそのまま書いても伝わらない事がありますので、何段階かに分けて記事を構成しなければならない場合もあるんですが、今日の「没個性化」も明日の「代替医療」明後日の「お待たせして申し訳ありません」に繋がる記事になっていますので、是非読んで下さいね〜。

また、ご意見など頂けると嬉しいです。

ちなみにわたくし、今日は忙しくてお昼ご飯抜きでした。
Posted by samurasamura at 2010年03月25日 22:19
カワウソさん、貴重なコメントをありがとうございます。

普通の定義から検討し治さなければなりませんね。10年間普通でも次の瞬間どうなるか解りませんし、エンジンかけた瞬間エアバッグがボン!と開いたんじゃ普通と言えるかどうか・・・。

やっぱり「CR-Z」にしては如何でしょうか?

個性が際立ちますよ〜!
Posted by samurasamura at 2010年03月25日 22:30
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

企業情報

会社名

さむら脳神経クリニック

住所

〒901-2226
沖縄県宜野湾市嘉数2丁目2−1
広栄メディカルビル 1F

TEL

098-897-1177

営業時間

9:00~12:00/14:00~17:00

定休日

水土午後 日曜祝日

URL

http://www.samura-clinic.com/

コメント

さむら脳神経クリニックは、日曜日も休まず診療しています。頭痛、物忘れ、めまい、手足のしびれのご心配がありましたら、ぜひ当院へお越しください。脳のお悩みを解決いたします