Dr.さむらのハイパー気まぐれ日記

さむら脳神経クリニックから脳の健康について書いていくつもりですが・・・。

経管栄養

我々は食べ物を咀嚼してゴックンしますが、寝たきりで意識状態の悪い患者さんは、自分で食事を咀嚼しゴックンすることが出来ません。このため消化管(胃)までチューブを入れておいて、流動食を流し栄養を補給してもらう方法を採ることがあります。

これを経管栄養というのですが、普通は経鼻的にチューブを胃まで挿入・留置して、1日の必要カロリーを何回かに分けて注入します。その都度経口的にチューブを入れて、食事が終わったら抜いちゃうって方法もありますが、普通は入れっぱなしで定期的にチューブを入れ替える方法が一般的です。

細いチューブとは言え、ず〜っと喉に異物が当たっているのは気持ちのいいものではありませんので、患者さんが自分でチューブを引っ張って抜いてしまうことがありますし、流動食を注入に抜かれちゃうと誤嚥の危険も高くなります。チューブを入れ替える際にも喉の奥を傷つけて感染の危険が高くなったり、固定の仕方が悪くてチューブ挿入部の鼻の穴に褥瘡を作ったり・・・。副作用も無いわけではありません。

ですから、経鼻経管栄養が長期間必要になる場合は、腹壁に穴を開けて直接胃へチューブを留置する経路が選択されますが、これを胃瘻(いろう)と言います。胃瘻の造設には、手術的に行う方法と内視鏡的に行う方法がありますが、最近はもっぱら内視鏡的胃瘻造設が行われていると思います。患者さんの身体の負担も少なく安全に出来ますし、食事を経口摂取出来る様になれば、胃瘻チューブを抜いてしまえばお腹の穴も自然に閉じてしまいますから。

慢性の患者さんを受け入れる病院に勤務していますと、寝たきりで胃瘻を造設された患者さんが転院してきます。確かに胃瘻が入っていると栄養管理は楽ですが、やっぱり自分の口から、自分で噛んで味わって食べて欲しいと思うのです。時間が来たら直接胃の中に栄養を入れてもらうだけじゃ、脳は刺激を受けませんもの。勿論それが出来ないが故の経管栄養なんですが、出来るだけ起こして座らせて車いすに移動して、さらには部屋の外に連れ出して他の患者さん達と一緒にお食事する(出来ればお口から)方が、脳の刺激と言う点からは絶対いいと思うのですが、如何でしょうか?




vol.24
患者さんについて求めること

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この記事へのコメント
よく言われる
「食は一番の楽しみ」

その通りだと思います

運動や仕事はできなくなっても

好きな物を食べたいという欲求はわりと叶いやすいかな、と

ですが、経口摂取ができない身体状態になると

栄養をとる、とらないは
「生命」にかかわりますよね

10年も介護の仕事をしていますと

経管栄養で栄養を確保している方と接する機会が多くあります

十人十色で
色んなケースはありますが

ケアマネ時代に
栄養確保の観点から経管栄養を検討した利用者さんがいました
ご家族は「一時的に栄養を補い、また食べれるようになったらはずしたい」
との意向でした
残念ながら、ご本人の意向は聴取困難な状態だったのですが
このように家族の思いは当然のコトではありますが「素晴らしい!!」
と感じました。
本人を思いやる気持ちを大事にしつつ
主治医、看護師らも巻き込みながらチームとして考えることの重要さ

介護の専門性としては
この部分をどうとらえるかで
存在意義が問われるコトだと感じています

別のケースで
脳出血の後遺症で嚥下困難となり数年間
経管(胃ろう)栄養だった方が、訪問看護の観察やアプローチから
ST、介護、家族一体となって

今では経口摂取が可能になっている方も実際にいます
(座位姿勢のポジショニング、合った自助具、見守りの介助は必要ですが)

食べること

ワタシも自分の口で食べれる可能性を追求する

大賛成です
Posted by ケアワーカーヒカルケアワーカーヒカル at 2010年03月11日 02:27
ケアワーカーヒカルさん、貴重なコメントをありがとうございます。

高齢者の場合など、徐々に食事が摂れなくなって弱っていく場合もあるのですが、そう言う時に経管栄養を導入するのが良いことなのかどうかも、難しい問題だと思います。人生の最後の時に、無理矢理鼻からチューブを入れられたり、お腹に穴を開けられたりするコトを、本当に本人が望んでいることなのかどうか、なかなか判断出来ないことだと思います。とは言っても、栄養が充分摂取できなければ、徐々に弱っていくわけで、周りの人達のどうにかしたいという気持ちも理解出来ないわけではないですが・・・。

もし自分が高齢になって、食事も充分経口摂取出来ないような状態になったとしたら、あっちこっちチューブを突っ込んだりせず食べられる範囲を食べさせてくれればいいんじゃないかなぁ。きっとその時が寿命なんだと思いますので。
Posted by samurasamura at 2010年03月12日 10:55
生きるために食べるのか 


食べるために生きるのか 




中学の家庭科の先生が質問したことがありました。 

私を含めほとんどの生徒が『生きるために食べる』に挙手していました。 



それに対して 



『生きるために食べるのであれば栄養ドリンクや錠剤、点滴、流動食でいいと思わない?』


その言葉にざわついていた教室が静まり先生に注目 


『色・味・盛り付け・テーブルセッティングも必要ないよね、遠足のお弁当も必要ないよね、家庭科で学んでいる事が無駄になると思わない?』




食べることに初めて真剣に考えた出来事を思い出しました。 
Posted by フェンネル at 2010年03月13日 00:47
フェンネルさん、貴重なコメントをありがとうございます。

私も「食べるために生きる」と言う意見に共感を覚えます。その理由は、3月16日の記事にしようと思います。

またご意見など頂ければ嬉しいです。
宜しくお願い致します。
Posted by samurasamura at 2010年03月14日 22:43
 
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