Dr.さむらのハイパー気まぐれ日記

さむら脳神経クリニックから脳の健康について書いていくつもりですが・・・。

お祈り vs 悪性脳腫瘍

昔々、私がまだ琉大の脳外科にいた頃の話です。

10月のある日、6歳の女の子が入院してきました。診断は脳幹部に出来た悪性脳腫瘍で、手術で到達出来る部位でもなく放射線治療が開始されました。体がでかくて人相の悪い担当医にもやっと慣れて来た頃、患者さんのお母さんからある依頼を受けました。

「韓国にお祈りで病気を治すことが出来る偉い先生がいて、重病の人を治すため神戸に来られるので是非連れて行きたい!」と言うのです。

んん〜〜。お祈りで悪性脳腫瘍が治れば、脳腫瘍で苦しむ人は世の中から消え去るだろうし、神の手を持つ脳外科医Dr.福島も失業することになってしまいますが、実際そうはなっていませんし・・・。放射線治療は一時休止することも出来ないわけではないですが、教授・助教授が許すはずありません。カンファレンスでこんなコト言ったら、医局員みんなに袋だたきに遭うに決まってます。正直言って、治療を一時中断してまで行く意義は全くないと思うのですが、患者さんのご両親の視点で考えてみますと、また別の景色も見えてきます。

脳幹部の悪性脳腫瘍で手術療法は不可能だし、放射線治療もどこまで効果があるかよく分からないところで、ご両親はワラにもすがる思いでその韓国から来るという偉い先生の元へ行きたいと希望しておられるわけです。患者さんの予後はかなり厳しくて、5年10年と長期生存出来る可能性は非常に低い状態でしたので、患者さんが最終的な段階になった時、医者の押しつける治療だけをやって来たことにご両親が納得出来るのか?後悔の念を抱くんじゃないか?医学的な意味はほとんど無いとは思いますが、ご両親が希望する治療法(?)、例えそれが私たちから見てほとんど眉唾モンのまやかしみたいなものであったとしても、頭っから否定するのではなく、やるだけやってみてもいいんじゃないか。

そんなことを考えまして、当時医局で一番下っ端だったんですが、居並ぶ先輩医局員の反対をはねのけ「一週間だけ」と言う約束で教授を説き伏せることに成功したのであります。そしてご両親にも「一週間だけ。お祈りが終わったら必ず帰ってくるように」と約束して貰って琉大病院から送り出したのです。

私はと言いますと、ご両親の希望に応えてあげることが出来たと、一人満足感に浸っていたのであります。一週間して神戸から帰ってきたら放射線治療を再開しようと、甘いことを考えていました。ホントに甘かったと思います・・・。

で、一週間経ちまして、患者さんが帰ってきません。ご両親からも何の連絡もありません。ご自宅へ電話しても誰もでないのであります。何度か連絡するのですが、全く連絡が取れずあれよあれよと日にちが過ぎていきました。

2〜3ヶ月も過ぎたそんなある土曜日のこと、当時は琉大病院も土曜日午前中の診療をやっていたのですが、私に患者さんのお父さんから電話がかかってきまして、「2、3日前から元気がなくなって、今朝はご飯も食べれなくなっている」と言うのです。「急いで連れてきて下さい」とお願いしまして、すぐ検査出来るようCT室の技師さんにも連絡しました。

お父さんが患者さんを抱きかかえるようにして病院の玄関から入ってこられたので、すぐにCT室にお連れしたんですがその間に患者さんの呼吸が停止してしまったのです。大急ぎで気管内挿管して呼吸をアシストしながら頭部CTを撮影しました。脳幹部の腫瘍は縮小しておりましたが、脳のあちこちに腫瘍が播種(飛び散ったような状態)になっており、ほとんど手の打ちようがない状況でした。患者さんのおかあさんは、「脳幹部の腫瘍は小さくなっている」と言う結果に関して、「お祈りの効果が出たのだ」と喜ばれました。私自身は、全く喜ぶことは出来ませんでしたが・・・。

放射線治療を再開しましたが、焼け石に水状態で自発呼吸が戻ることはなく、勿論意識状態も回復することなく、一週間後に彼女は亡くなりました。

それが今日です。12月18日は彼女の命日なのです。

あれから10数年が経って、ラグビー部の学生達を見ていると、彼女が病気にかからず健康で生きていたらちょうどこの学生達と同じ歳頃になっていただろうなぁ、と思ったりします。少なくとも脳幹部の腫瘍は、放射線治療で小さくなっていたわけですから、あの時私がバカな判断間違いをしなければ、2〜3年は、いや、もっと長生き出来たかもしれません。お友達と遠足に行ったり運動会やいろんな楽しい思い出だって作れたかもしれないのに、私のせいで・・・。

毎年12月18日が来ると、悔やんでも悔やみきれない思いが甦ってきます。

「私はあなたのことを忘れてはいませんよ。そしてこれからも、決して忘れることはありませんよ。」と、天国にいる彼女に向かって一人語りかけるのです。




vol.24
患者さんについて求めること

同じカテゴリー(医療)の記事

 
この記事へのコメント
とても深くて意味のあるお話だと思いました。
お仕事がんばってくださいね。
Posted by りゃんつー ☀ at 2009年12月18日 08:35
とても良いお話でした。ありがとうございました。医学に携わる方の心が美しく感じましたp
Posted by yoshidaryuusuke at 2009年12月18日 08:43
はじめまして!おはようございます。
毎日楽しみに拝見しております^_^
経絡マッサージの整膚と気功のようなレイキのサロンをしています、たんぽぽの精といいます。
サロンにいらっしゃるお客様も祈願や気功治療に頼れば大丈夫と思っている方も沢山いますf^_^;
『西洋医学での検査や治療も必要だと思いますよ!免疫力をあげたりするために東洋医学もバランスよく利用していかれたほうがいいと思います』とお話する私です。私も西洋医学で病気を治して頂き、東洋医学で体力、免疫力をアップさせて今は元気な毎日を送る事ができています\(^ー^)/
何事もバランス
柔らかい考え
ありがとうございます
Posted by たんぽぽの精 at 2009年12月18日 10:15
先生こんにちわo(^-^)o

風邪が長引いているようですが大丈夫ですか?

すごく奥深い内容です。
自分もこれまでに色々な方の死を見てきました。

なぜ、もう少しこんな治療してれば…とか、
ナースの立場経験上この治療したらよくなるのにと
わかっていても、Drに
言ってもプライドで変な言葉返されたり…。

一番は患者さんや家族の方が満足した治療を受け、
ありがとうございましたと言葉をもらった時が、ナースとして仕事していてよかったと思うときです。

Drとして先生も色々経験されて来たと思います。
これからも患者様優先に考えて行動してくれることを願います。

すみません。偉そうな事書いてしまいました。

では、又ブログにお邪魔しますねo(^-^)o
Posted by 櫻宝 at 2009年12月18日 12:17
もっとこうしてれば…。

私も患者さんを看てると小さな事から大きな事まで後悔することはたくさんあります。

去年ターミナル期にある祖父の外泊に付き添いました。食欲もあり自分で歩くこともできた祖父だったのですが、外泊を終えて病院に戻り一週間程で亡くなってしまいました。

同僚には、最後に外泊に行けてよかったさぁ。と言ってもらいましたが、これで良かったのか…。

長期入院の患者さんが最後に外泊に行けたら、良かったね。って心から思えるのですが、自分の判断で死期が早まったのかもしれないという想いが残りました。

先生、周りが何をいっても後悔は消えないと思いますが、私は先生の判断を嬉しく思いました。

人の命、気持ち
何が正しいかなんてわからないですもんね。

忙しい毎日だと思いますが、これからもがんばってください☆
Posted by nico2-mami at 2009年12月18日 14:43
こんにちは。
先生の経験を読み、私も以前やらかしてしまった失敗を思い出しました。
少し長くなりますので、あらかじめお詫びします。

実は私は、主にオステオパシーとカイロプラクティックの施術を行うことを本業にしております。

まだ、施術師になりたてのころ、ある年配のご婦人の内臓マニピュレーションを行ったときに、やたらお腹がフニャフニャしていて、普通とは違う手の感触を覚えたのですが、ご本人は少し便秘ぎみだと訴えるだけ。確かに左の下腹部だけが少し硬い感触がありました。
しかし、食欲も旺盛で元気もあり、夕飯のメニューなども何しようかととても楽しそうで、そんな様子につい私も、大丈夫かなぁ…と、思ってしまい、家族にだけこの点を簡単に説明してその日の施術は終わりました。

しかし翌日家族から、あの後病院で入院することになったと連絡がありました。
実は、私から説明を受けたあと、家族の方も気になって夜間診療の時間ではあったのですが、病院に連れていったそうです。
検査の結果、ご婦人は胃潰瘍で出血があったのだとか。
けっこうな出血だったそうですが、ご本人はケロリとされていて、痛みもなかったことから、誰もまったくきづかなかったのです。
結局、胃をほとんど切除することになったそうですが、医者の話だともう少し遅れていたら、命にかかわるところだった、なぜもっと早くつれてこなかったのか…と、ボヤかれたとか。

この話を聞いて、学生のころ胃腸科の専門医から『内臓の出血があったときの感覚』を教わっていたのに、すっかりそのことを忘れてしまっていた自分が恥ずかしくて、ひどく落ち込みました。

あの時、もうすこし強く病院への受診を勧めるべきだったと…。

家族の方からは、それでも私が注意を促してくれたおかげで病院につれていったんだから…と感謝されはしたものの、自分的にはけっこう痛い思い出となりました。

しかし、こういった失敗からいろいろと学ぶこともできるわけで…
今では、この経験から、ちょっとでも怪しいと思ったケースは早めの受診をお願いしてます。
中には受診後、心臓疾患や重大な内臓疾患が発見された方もいらっしゃったので、そのことを考えると『強く受診を勧めてよかった』と、思ったことも何度もあります。

ちなみに胃を切除したあのご婦人は、術後一ヶ月で家族の目を盗んでラーメンをどんぶり一杯汁も残さず平らげ、周囲から呆れられていたそうです(笑)
Posted by つかさつかさ at 2009年12月18日 18:14
さむら先生こんばんわ
はじめまして
レッドカンガルーで〜す
助けられたのにという思いはわかります
助けられない事も諸事情によりあると思いますので

亡くなった人の為にもこれから先生を頼りに闘病している方を診てあげてくださいね
Posted by レッドカンガルー at 2009年12月18日 21:49
はじめまして。
先生のこれまでの記事を拝読しました。
どれも、胸が熱くなります。
お医者様の、患者さんを思う気持ちに
頭が下がります。
これからも、ブログにお邪魔しますね。
Posted by なを美なを美 at 2009年12月18日 23:31
はじめまして。
おじゃまします!

私は、看護師で、今はアロマセラピストとしてお仕事しております^^
とっても興味深い、ブログなので・・・
勝手に、お気に入りにさせていただきます^^
Posted by AnelaAnela at 2009年12月18日 23:38
samura さま

この出来事に対して返す言葉はありませんが、
いつの日か、あの時やったことが、よかったんだと思える日が来ることを、
心より願っております。
Posted by 沖縄の小堺一機沖縄の小堺一機 at 2009年12月19日 01:45
ブログへのコメントありがとうございました

私にも娘がいますので、実際に生死に関わる病になったら、どんな療法でも祈祷でもやってみるかもしれません
このご両親の藁にもすがりたい気持ちがわかるような気がします

だいぶ前に遠縁の年配の方が、ガンで余命3ヶ月と宣告されてから、「ノニ」を毎日大量に飲んだおかげで1年半も延命したという話があります
ほんとにノニだけのおかげだったのか
医学的にいろんな数値も改善したのか
そこまではわかりませんが、本人はとても満足していたとのことです

さて、私が最近興味があるのが粒子線治療です。国内でもまだ行えるのは5,6箇所らしいですね
消化器系は難しいようですが脳や肺には非常に効果があるとか。
治療費にはびっくりしますが、万一の時の選択肢として持っておこうと思ってます


心に残るお話ばかりなので、これからも時々お邪魔しますね
Posted by apilet at 2009年12月19日 03:05
りゃんつーさん、ご訪問、コメントありがとうございます。

振り返ってみれば、仕事の重圧に負け続けの19年だったかもしれません。自分の思いと患者さんやご家族の思いがうまくシンクロした時は、ホントに良い結果が出るんですが、いつもそうなるわけでもなく本当に難しいと思います。
Posted by samurasamura at 2009年12月19日 10:51
yoshidaryuusukeさん、ご訪問ありがとうございます。

人間の生き死にに直接関わりたくて脳外科医になったものですから、亡くなった患者さんのコトはいつも思い出してしまいます。特に小さな子供の患者さんは、自分の子供と重なったりして、忘れようと思っても忘れることも出来ません。2月になれば、また甦ってくる思い出がありますし、そのこともいずれupしようと思います。

またのご訪問をお待ちしておりますね。
Posted by samurasamura at 2009年12月19日 10:51
タンポポの精さん、はじめまして。
ご訪問、コメントありがとうございます。

おっしゃる通り、何事もバランスが肝要かと思います。宗教もお祈りも、沖縄だとユタとかも、バランス良く取り入れれば良いのではないかと思います。現在は、EBM偏重の世の中になっておりますが、科学的なエビデンスが無いからと言って切り捨てる気には、私はなれません。かと言って、エビデンスがあるものを全く無視する訳にもいかす、いつもその狭間で右往左往しているのが現状なのかもしれません。最終的に判断し決定するのは、医者ではなく患者さんご自身ですから。
患者さんが自由な選択が出来る様にしてあげるのも、我々の役割だと思っているのですが、偏りすぎないようにバランスをとっていくのは難しいですね・・・。
Posted by samurasamura at 2009年12月19日 10:51
櫻宝さん、おはようございます。

医者のプライドって、うまく働いて良い方向に行ってくれることもあるし、高い壁となって立ちはだかることもあるし、パラメディカルの方々にも「傾向と対策」みたいなのがあると良いかもしれませんね。

末期癌の患者さんが、これまでやっていた抗癌剤の治療をストップして民間療法に期待をかけたりする場合、自分の治療を否定された様な気持ちになってしまうドクターもいるかもしれませんが、私なら「そんなの効かないよ」と頭から否定するのではなく、「信じてトライすればきっと良い結果が出ると思いますよ」とか「もし体質に合わずうまく行かないような時は、いつでも戻ってきて下さいね」と送り出してあげたいと思います。

今回はそれが裏目に出たケースだったのですが、やっぱり次も同じように考えて対応するんじゃないかと思います。全然進歩していませんね・・・。
Posted by samurasamura at 2009年12月19日 10:52
nico2-mamiさん、はじめまして。
ご訪問、コメントありがとうございます。

昔、末期癌の患者さんを無理矢理外泊させたことがあって、でも結局その患者さんは外泊すら出来ず自宅を見ただけで返ってきてしまったのですが、そのことが死期を早めてしまったのではないかという後悔は、やはり20年近く経ってもずっと残っています。その時のことも、今度書きたいと思いますので、また読んで下さいね。
Posted by samurasamura at 2009年12月19日 10:52
つかさんさん、ご訪問ありがとうございます。
貴重な経験を書いて頂き、ありがとうございます。

本で読んだり上の先生から教わったコトって、なかなか身につきにくいもので、実際自分が経験したコトの方が何倍も記憶に残ります。「百聞は一見にしかず」で、どれだけ沢山の患者さんを見たかは重要な要素だと思います。出来るだけ失敗はしたくないのですが、人間のやることですから100%成功するわけでもありませんし。成功から学ぶことより失敗から学ぶことの方が、実際は多いのかもしれませんね。その意味で、患者さんが多くのことを教えてくれます。私たちは、日々患者さんに教わりながら、成長しているのだと思います。
Posted by samurasamura at 2009年12月19日 10:53
レッドカンガルーさん、はじめまして。
激励のコメント、ありがとうございます。

昨日でセントラル病院での外来診療も終了し、病棟で入院患者さんを担当することも、もう無いんじゃないかと思っています。11月23日の「夜中の電話連絡」にも書いたのですが、入院患者さんの情報を逐一入れておかないと気が済まない性格で、病棟スタッフは私と付き合うのは大変だったんじゃないかと思います。主治医として、どんな真夜中でも入院患者さんの状態の変化は、リアルタイムで情報を入れて欲しかったのですが、なかなかうまく行きませんでした。

2月からは自分のクリニックで、外来診療だけになります。入院で診れる患者さんの数は限度がありますが、外来では入院よりずっと沢山の患者さんに接していくことが出来るので、楽しみにしています。これまでにも負けず頑張っていきますので、応援宜しくお願いしますね。
Posted by samurasamura at 2009年12月19日 10:53
なを美さん、はじめまして。
ご訪問、コメントありがとうございます。

限られた時間の中で授業を進め目標を達成していく上で「バランスが難しい」と言うお話しは、私たちの仕事にも言えると思います。私のようにバランスを失ってしまうと、病棟業務もうまく行かなくなってしまいますし、お祈りだけって事態も起こってしまいます。なかなか難しいんですが、不完全だからこそ毎日頑張る意義もあるのかもしれませんね。

またのご訪問をお待ちしてますね。
Posted by samurasamura at 2009年12月19日 10:54
Anelaさん、はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
お気に入りへの登録も、ありがとうございます。

アロマテラピー、すごく興味があります。嗅覚ってすごく原始的な感覚なだけに、脳の深部にまで到達し刺激することができる感覚なのではないかと思っているものですから。是非、いろいろ教えて下さい!拙いブログでお恥ずかしいのですが、また読んで下さいね。
Posted by samurasamura at 2009年12月19日 10:54
小堺さん、おはようございます!

実際の臨床現場では、特に救急では即断即決が求められることも多く、やったことが全部良い結果になるとも限りませんが、今はやったことの結果よりそこに至るまでのプロセスを重視するようになってます。どう診断し、患者さんやご家族にどう説明し、一緒に考えて治療を進めることが出来たかどうか。独りよがりでもいけませんし、かと言って患者さんに迎合してもダメだし、先程来出ているように、「バランス」を保ちつつってトコが難しいですね。
Posted by samurasamura at 2009年12月19日 10:54
Aplletさん、先日なんかすごく変なコメントを書いてしまって、失礼致しました。
Rh+ではありますが私もB型牡牛座なもんですから・・・。

患者さんの満足ってすごく難しい問題で、これについてもいつか記事にまとめようと思っています。

重粒子線治療は保険適応が通っていないので、治療費はおそらく300万円くらいかかるのではないかと思います。消化管、例えば腸の上皮は、3日に1回のペースでターンオーバーするので、放射線にはとても弱い組織です。前立腺癌の放射線治療では、すぐ後ろにある直腸に被爆させないようにしながら、前立腺に高線量を照射しなければならず大変難しいのですが、今は強度変調照射という技術でそれが可能となっています。

重粒子線治療は、まだまだ誰でも受けられる治療法とは言い難いですが、ガンマナイフに関しては全国に52台が導入されていて沖縄にいても長期間待つことなくすぐに治療が受けられます。外国と比較すると、フランスは2台しかありませんしブラジルも1台だけですから、転移性脳腫瘍の患者さんは治療の順番を待っているだけで時間切れになってしまうことも多々あるようです。

医学の進歩は凄いなぁと思いますが、日本はその技術を享受出来る環境にあり、その点をとっても大変幸せなことだと思います。
Posted by samurasamura at 2009年12月19日 13:14
samuraさん

はじめまして!以前からちょこちょこと御拝見しておりました。ステキなブログですね!
先生の患者さんに対する思いが伝わり、こんなあったかい先生が沖縄にいらっしゃることに感動しています。

親御さんのワラをもつかむ思いもとても分かります。それを認めた先生の優しさも分かります。
結果的に言ってしまえば後悔も色々ありますが、患者さんとその家族にとっては納得のいく選択だったと思います。そして、毎年この日になると思い返すという先生の思い、きっと天国で受け止めてくれていることと思います。

いい話、ありがとうございました。
Posted by てだこてだこ at 2009年12月19日 14:13
てだこさん、はじめまして。
ご訪問コメントありがとうございます。

年が明けると、2歳で亡くなった脳腫瘍の患者さんの命日がやってきます。最初の手術の時私が主治医だったんですが、2回目の手術の時私は大学病院の外に出ていて、明日手術と言う時に連絡が来ました。

その手術日というのが、患者さんの誕生日の2日前だったんです。仕事が終わって夜琉大病院に会いに行くと、既に髪の毛は丸坊主にされてました。まだお話し出来るほど大きくはないんですが、お正月に着物を着て撮った写真を、小さな手で私に見せてくれたのを憶えています。そして手術はうまく行かず、術後6日目に患者さんは亡くなりました。

全く緊急性のない手術で、誕生日の2日前に手術する必要性も全くなかったと思ってます。大学病院にいたら絶対させなかったのに!いや、もっと早く連絡が来ていたら・・・。

今日も患者さんのお母さんのお店の前を通ってきました。16年経ちますが、未だに忘れられない、後悔ばかりが湧いてくる思い出です。「毎年この日になると」と書きましたが、毎日のように思い出しています。

自分で選んだ道ですが、かなりきついです。でも、人の「死」に対して鈍感になってしまっては、この道を選んだ意味も消えてしまうでしょうし、亡くなった子供達のことを思い出しても泣かなくなったら、その時は医者を辞めると思います。
Posted by samurasamura at 2009年12月20日 11:44
はじめまして
この日記よんで
言葉が出ない感じですが

長く生きる事だけが
幸せじゃいと思います
その子供*家族が奇跡信じて
行動し 自分で決めた道を選ばしてくれた病院に対し感謝してると思います
Posted by にこちん at 2009年12月20日 17:18
にこちんさん、はじめまして。
ご訪問ありがとうございます。

患者さんが亡くなった時、お母さんが、「娘が病気になったことで家族の絆が深まった」と言ってました。亡くなった患者さんに直接的な利益はありませんが、一縷の救いはその言葉でしょうか・・・?
難しい問題ですが、医者の視点ばかりでなく、患者さんやご家族の視点でも考える必要があると思います。

またのご訪問をお待ちしてますね。
Posted by samurasamura at 2009年12月21日 09:29
はじめまして。


こちらの記事読ませていただきました。

正直、言葉がでず
自分自身にも
すごく考えさせられる内容でした。


こういう考える機会をあたえていただけた事に感謝です。

今後もお仕事頑張って下さい
Posted by a.k at 2009年12月25日 00:14
a.kさん、はじめまして。
ご訪問、コメントありがとうございます。

やはり私たちの日常においては、「死」について見聞きしたり考えたり、実際に近親者の死を体験することが極端に少ないように思います。すごくデリケートで難しい問題だと思うのですが、これからも情報発信していきたいと思いますので、また是非読んで下さいね。
Posted by samurasamura at 2009年12月25日 18:44
改めて読みかえして涙です…




先生は後悔…



と、とらえてますが同じ物事をちがう角度からとらえたら必ずしもそうではないと思います。 




ブログを読んでいると先生の暖かさが溢れ伝わってきます。 



どうぞご自愛ください。
Posted by フェンネル at 2009年12月29日 00:52
フェンネルさん、コメントありがとうございます。

おっしゃる通り、医者を含めた医療側の視点、患者さんの視点、御家族の視点ばかりでなく、更に違う角度からのとらえ方もあろうかと思います。個々人で感じ方も違うと思いますが、是非またご意見を頂ければ幸いです。
Posted by samurasamura at 2009年12月30日 01:08
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

企業情報

会社名

さむら脳神経クリニック

住所

〒901-2226
沖縄県宜野湾市嘉数2丁目2−1
広栄メディカルビル 1F

TEL

098-897-1177

営業時間

9:00~12:00/14:00~17:00

定休日

水土午後 日曜祝日

URL

http://www.samura-clinic.com/

コメント

さむら脳神経クリニックは、日曜日も休まず診療しています。頭痛、物忘れ、めまい、手足のしびれのご心配がありましたら、ぜひ当院へお越しください。脳のお悩みを解決いたします