Dr.さむらのハイパー気まぐれ日記

さむら脳神経クリニックから脳の健康について書いていくつもりですが・・・。

水頭症の治療

水頭症の治療には、脳室と腹腔もしくは心房とバイパスを造る手術を行います。

正常圧水頭症でもお話し致しましたが、髄液は分泌されては吸収され分泌されては吸収されと言う循環を繰り返しております。150ccの脳室体積に1日500cc産生されているので、1日3回くらいはターンオーバーしているわけです。

脳の表面から吸収された髄液は、静脈に入り血液と混ざり合って体循環へと帰って行きます。髄液も身体の大きな循環の一つなんですね。なんか不思議な気がします。

水頭症で髄液が溜まりすぎてしまうと、脳が内側から圧迫されて歩行障害や認知機能障害などの症状が起きてしまいます。これに対して溜まりすぎた水をどこかに逃がしてあげる手術が行われます。冒頭にも書きましたように、多くの場合腹腔内に逃がしてあげます。腹腔内に流れた髄液は、腹膜から吸収され体循環へと戻っていきますので、お腹に水が溜まりすぎるというようなことはほとんど起こりません。

治療は、シャントチューブという特殊なチューブを身体に埋め込みます。まず頭蓋骨に小さな穴を開け脳室へ細いチューブを留置します。また、お腹にも小さな切開を入れ、同様の細いチューブを留置します。脳室側のチューブと腹腔側のチューブを繋いでバイパスを造るんですが、繋いだチューブが身体の外でプランプランしてたらまずいので、皮下にトンネルを造ってチューブ全体を埋め込みます。細いチューブが皮下を通って脳室から腹腔まで通じており、このチューブを通って髄液が腹腔内へ流れる仕組みです。この手術を脳室腹腔短絡(V-P シャント)術と言います。この手術は、全身麻酔が必要です。

無制限に水が流れると、低髄圧になってしまいますので、バイパスの途中に圧規制のバルブをおいて、髄液圧がある一定の圧以上に上がると髄液が流れるように工夫されたシステムになっています。

昔は一定の圧設定しか出来ませんでしたが、現在は可変式バルブと言う便利なものがあって、身体の外からシャントバルブの圧設定を変えることも可能です。

問題は、小児の患者さん。身長が伸びるに従って、腹腔側のシャントチューブがどんどん引っ張られて抜けてしまい、髄液がうまく流れなくなることがあります。このような場合は、シャントを再建しなければなりません。身長が伸びても大丈夫なように、シャントチューブを出来るだけ長くお腹に入れておくという考えもあるにはあるんですが、あんまり長くチューブを押し込むとチューブの圧迫で腸管に穴が開いたりすることもあって危険です。逆に小児は腹腔も小さいので、大人の患者さんより短くしたりしています。

身体の成長に合わせてシャントチューブを入れ替えたり、脳室の大きさを見ながら圧の設定を調節していく必要があることを考えると、一生付き合っていく病気と言えるのかもしれませんね。




vol.24
患者さんについて求めること

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この記事へのコメント
そう言う意味だったんですね・・・
その事を思うと、親はどんなにか心配な事でしょう・・・
先生のブログ、その友達に紹介しますね

私は、読谷村でコミュニティーラジのパーソナリティーをしていて
以前に『婦人科健診のススメ』
(こちらは近い身内に、乳癌を克服した者が居たので、お願いして
出演してもらいました)
そして・・・『ウツについて・・・』
知識はほとんどありませんが、周りで増えてきている・・事と
ウツの患者は増えているのに、世の中の認知度が低く
最近では脳との関わりもある・・・
と知ったので、それらをテーマに、数回、番組をやった事があります

又、番組でやる時に分からない事など、色々教えてくださいね~
Posted by たかりんこたかりんこ at 2009年12月19日 09:13
先生こんばんわ。
先生のコメントの返事見てるとすごいと思います。
一人一人に丁寧に、解りやすく答えていて読んでいて感心するのと、すごいと思いました。

先生のブログは、医療関係の人にとっては、勉強になります。
一般の人が読んでも解りやすく考えさせられたりします。

何事にも一生懸命の先生の姿勢がすごく好きです。
これからも、患者様と心の通う医療をしてくださいね。
ただオーバーワークして
くれぐれも体は壊さないでくださいね。いつも一生懸命なのでそれが心配です。すみません。偉そうな事書いてしまいました。
これからもお邪魔しますのでよろしく(o^-')bお願いします。
Posted by 櫻宝 at 2009年12月19日 20:47
たかりんこさん、ご訪問ありがとうございます。

日本人女性の20人に1人は、乳癌にかかるって話があるくらい、乳癌は身近な病気になってきてますよね。ガンマナイフでは、沢山の転移性脳腫瘍の患者さんの治療を行いましたが、原発巣別に見ると肺癌がダントツのトップなんですが、次が乳癌です。ホントに若い方でもかかる病気で、油断出来ないなぁと感じてます。

ただ、一般の方の認知度はまだまだ低いので、啓蒙という意味からもラジオで取り上げるのは良いことだと思います。頑張って下さいね。

私に出来るのは記事を書くことくらいですが、取り上げて欲しいテーマなどありましたら、コメント頂ければと思います。
Posted by samurasamura at 2009年12月20日 11:52
櫻宝さん、おはようございます。

実は、2月にクリニックをオープンして忙しくなったら、今のように毎日記事を書いたり、頂いたコメントにお返事を書いたり出来るかなぁ、と心配しているところだったんです。

最初の頃はどうせヒマだと思うので大丈夫だとは思うのですが、だんだん来て頂ける患者さんが増えてくると、仕事も忙しくなってブログの更新も毎日ってわけにはいかなくなってしまうかも・・・。

書きたい気持ちはあるんですが、もしかしたら充分なお返事が出来ないことがあるかもしれませんが、その時はお許し下さい。
Posted by samurasamura at 2009年12月20日 11:59
お言葉に甘えて、一つ・・・

マレではあるが、男性でも乳癌になる!
と、聞いた事がありますが・・・
以前、芸能人の方がかかったと、記者会見していたような
気がしたんですが・・・
男性の乳癌もありますよね?
Posted by たかりんこ at 2009年12月20日 15:31
たかりんこさん、おはようございます。

男性の乳癌、希ですが確かにあります。セントラル病院でも、1例男性の乳癌患者さんのコンサルトがありました。外人の方でしたが、結局ガンマナイフ治療までには至りませんでした。
Posted by samurasamura at 2009年12月21日 09:32
はじめまして。

母が、10年前にくも膜下出血でたおれ、水頭症になり、シャント手術をしました。ところが、1年ほど前、首から胸にかけていつも見えていたチューブがない!と手術した病院に行ったそうです。お腹でぐるぐる巻きになって、落ちていてチューブを取る手術をしたそうです。
その後、年のせいもあるのでしょうが(現在67歳)ふらつき、物忘れがすこしずつ進んできているような気がします。もう一度、チューブを入れたほうがいいのでしょうか?教えていただけたらと思います。
だいたい、チューブが抜けてしまうなんてことがあるのでしょうか?
よろしくお願いいたします。
Posted by ちゃこ at 2010年11月25日 09:19
ちゃこさん、ご訪問コメントありがとうございます。

チューブを入れ直すべき(シャントを再建すべき)かどうかは、タップテストをしてみたらある程度判断出来ると思います。腰から髄液を20〜30cc抜いて、フラつきや物忘れの症状が良くなるかを見るわけなんですが、可能であれば髄液を抜く前後で脳血流シンチで血流を測ってみるのも、シャント再建の効果判定に有効だと思います。

症状が改善したり脳血流が改善するようなら、シャント再建した方がいいと思います。

チューブが途中で断裂することは、起こり得ます。私の患者さんにも、何度かチューブが断裂して再建した方がいらっしゃいます。断裂したチューブが腹腔内に落ちたことはありませんが、気付くのが遅かったらそうなっていたかもしれません。
Posted by samurasamura at 2010年11月25日 22:04
 
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