Dr.さむらのハイパー気まぐれ日記

さむら脳神経クリニックから脳の健康について書いていくつもりですが・・・。

聴神経鞘腫の治療の選択肢(2)

次の選択肢が、ガンマナイフなどの定位放射線治療です。

ガンマナイフ治療は、聴神経鞘腫にガンマ線という放射線を照射して、腫瘍を破壊してしまう治療法です(元斗皇拳的に言えば、腫瘍を滅殺か?)。「ナイフ」と言う名称になってますが、別に切り取るわけではありません。この場合の問題点は、聴神経鞘腫に放射線を照射すると半年〜1年程度経過した頃に腫瘍サイズが一時的に大きくなることがあると言うコトです。6割前後の症例で腫瘍サイズが大きくなりますので、元々サイズの大きな腫瘍には適さない治療法です。我々医者は、出来るだけ悪く考えて(悪い状況を想定して)対処すべき立場にありますので、聴神経鞘腫にガンマナイフ治療を行えば一時的には腫瘍は必ず大きくなると考えておかなければなりません!

ですから、聴神経鞘腫に対するガンマナイフ治療の適応はかなり厳格に守られていて、具体的には腫瘍長径3cm以内、これは体積になおすと約8ccと言うコトになりますが、これより大きなサイズの腫瘍にはガンマナイフ治療は行いません。どうしてもガンマナイフで治療したい場合は、一旦開頭手術で腫瘍サイズを減じておき、小さくなったところにガンマナイフで照射すると言う二段階の治療法を行うことになります。

完治を目指して手術で全摘しなければならないプレッシャーと、残った腫瘍はガンマナイフで治療するから半分取ればいいや〜と言うプレッシャーは、術者にとっても大きな違いがあると思いますし、術後の合併症(特に顔面神経麻痺)の確率も格段に低くなるはずです。無理して顔面神経を剥離したりする必要がありませんので、顔面神経の合併症はほとんど起きないと言ってもいいでしょう。

と言うコトで、ガンマナイフ治療の場合直接腫瘍や神経に触るわけではありませんので、合併症の危険は非常に少なくなりますが、まず腫瘍制御率(ガンマナイフ治療後追加の治療を必要としない確率とお考え下さい)は95%と非常に効果が高い治療法です。 顔面神経麻痺は一時的には1〜2%、永久麻痺はほとんどありません。聴力の温存率は、70〜80%。腫瘍が一時的に大きくなった際に、20%前後でめまいが強くなる場合があります。特殊な合併症として水頭症がありますが、ガンマナイフ治療後水頭症の合併が5%程度に認められます。

8年間で私が治療した68人の聴神経鞘腫の患者さんでは、お一人も顔面神経麻痺を起こすことはありませんでしたが、これはまさにガンマナイフの威力と言うほかありません!




vol.24
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