高次脳機能障害について
「あんたいくら何でも単純化し過ぎ!」というご批判は覚悟の上で、昨日は人間に備わった「五感を使って脳に入力された情報を統合し、判断し、それらの情報を元に論理的に物事を考え、問題を解決したり目標に向かって計画を立てたりする」能力のことを高次脳機能とお話ししました。
しかし高次脳機能障害にはいろいろな症状がありますし、どれも関連しあっていますので各々を理解するってのは非常に煩雑で困難な作業です。そう易々と単純化出来る代物ではありません。ただ、感覚入力や運動機能には問題がないにも拘わらず、その処理のプロセスで混乱が生じて来ると、処理されて出力された結果に問題が生じてくるわけです。
例えば、失認という高次脳機能障害がありますが、これは視覚や聴覚、触覚などの体性感覚は正常なのに、見たもの、聞いた音、触った物体をその通りに認識出来ないと言う状態です。
視空間失認は、右頭頂葉の障害で発生します。普通脳は左半球が優位半球で、右半球は劣位半球と言ってサボっているので、左半球が主に情報処理の作業を受け持っているんですが、空間認識に関しては右半球の方が優位に立っているんです。また、脳は交差して支配しますので、右の脳は左の手足を、左の脳は右の手足を支配するコトになります。空間認識においても、左の頭頂葉は右半分の空間を認識するんですが、右頭頂葉は左の空間認識ばかりではなく右の空間をも認識してくれるので、左頭頂葉に問題が生じて右側の視空間が認識出来なくなっても、右頭頂葉でカバー出来ますから症状として現れません。しかし、右頭頂葉に障害が生じると、左視空間が認識出来なくなってしまいます。これが、視空間失認です。結構気付きにくい症状ですが、距離感が把握出来なくなるので、ペンを取ろうとしたが手が届いていなかったとか、左半分だけよくぶつかるとか・・・、心当たりのある方、脳外科へ受診して下さい!
では、反対側の左頭頂葉ではどんな症状が出るかというと、非常に特徴的な4つの症状が出現してきます。失算(計算が出来ない)、失書(字を書くことが出来ない)、左右失認(右と左の区別が出来なくなる)、手指失認(自分の指が分からなくなり、指定された指を示せなくなる)の4つで、4つとも出そろうとゲルストマン症候群と呼ばれます。この中で最も重要なのは手指失認で、身体の空間的位置関係が認識出来なくなる「身体失認」という失認の一種と考えられます。
これとは別に、行為障害という高次脳機能障害がありますが、一般的には失行と呼ばれています。「運動麻痺などの運動障害がなく、実行すべき行為についても充分理解しているにも拘わらず、その行為を正確に実行出来ない状態」と、なんとも分かりにくい定義です。一番分かりやすいのが着衣失行だと思いますが、着衣失行では衣服を着るという動作が出来なくなります。シャツを着る場合の、左袖に左手を通して次に右袖に右手を通して順番にボタンをしめて・・・、と言う自然の流れが出来なくなり、ボタンをしめてから袖に手を通そうとしたりと、順序立てた動作を行うことが出来なくなります。
シャツの袖とそれを通す身体の部分は、空間的に一致していなければならず、その身体の部分に対する認識も正確でなければなりませんので、着衣失行の存在はその背景に視空間失認や身体失認が合併していると言われています。
と言うコトで、それぞれの症状が独立して存在するわけではなく、お互いに絡み合って出てきてしまうので、症状の理解というのは大変難しくなってくるのであります。
しかし高次脳機能障害にはいろいろな症状がありますし、どれも関連しあっていますので各々を理解するってのは非常に煩雑で困難な作業です。そう易々と単純化出来る代物ではありません。ただ、感覚入力や運動機能には問題がないにも拘わらず、その処理のプロセスで混乱が生じて来ると、処理されて出力された結果に問題が生じてくるわけです。
例えば、失認という高次脳機能障害がありますが、これは視覚や聴覚、触覚などの体性感覚は正常なのに、見たもの、聞いた音、触った物体をその通りに認識出来ないと言う状態です。
視空間失認は、右頭頂葉の障害で発生します。普通脳は左半球が優位半球で、右半球は劣位半球と言ってサボっているので、左半球が主に情報処理の作業を受け持っているんですが、空間認識に関しては右半球の方が優位に立っているんです。また、脳は交差して支配しますので、右の脳は左の手足を、左の脳は右の手足を支配するコトになります。空間認識においても、左の頭頂葉は右半分の空間を認識するんですが、右頭頂葉は左の空間認識ばかりではなく右の空間をも認識してくれるので、左頭頂葉に問題が生じて右側の視空間が認識出来なくなっても、右頭頂葉でカバー出来ますから症状として現れません。しかし、右頭頂葉に障害が生じると、左視空間が認識出来なくなってしまいます。これが、視空間失認です。結構気付きにくい症状ですが、距離感が把握出来なくなるので、ペンを取ろうとしたが手が届いていなかったとか、左半分だけよくぶつかるとか・・・、心当たりのある方、脳外科へ受診して下さい!
では、反対側の左頭頂葉ではどんな症状が出るかというと、非常に特徴的な4つの症状が出現してきます。失算(計算が出来ない)、失書(字を書くことが出来ない)、左右失認(右と左の区別が出来なくなる)、手指失認(自分の指が分からなくなり、指定された指を示せなくなる)の4つで、4つとも出そろうとゲルストマン症候群と呼ばれます。この中で最も重要なのは手指失認で、身体の空間的位置関係が認識出来なくなる「身体失認」という失認の一種と考えられます。
これとは別に、行為障害という高次脳機能障害がありますが、一般的には失行と呼ばれています。「運動麻痺などの運動障害がなく、実行すべき行為についても充分理解しているにも拘わらず、その行為を正確に実行出来ない状態」と、なんとも分かりにくい定義です。一番分かりやすいのが着衣失行だと思いますが、着衣失行では衣服を着るという動作が出来なくなります。シャツを着る場合の、左袖に左手を通して次に右袖に右手を通して順番にボタンをしめて・・・、と言う自然の流れが出来なくなり、ボタンをしめてから袖に手を通そうとしたりと、順序立てた動作を行うことが出来なくなります。
シャツの袖とそれを通す身体の部分は、空間的に一致していなければならず、その身体の部分に対する認識も正確でなければなりませんので、着衣失行の存在はその背景に視空間失認や身体失認が合併していると言われています。
と言うコトで、それぞれの症状が独立して存在するわけではなく、お互いに絡み合って出てきてしまうので、症状の理解というのは大変難しくなってくるのであります。
この記事へのコメント
samura先生、私のブログを見てくれてありがとうございます。
絢瀬のママです。
医療関係者の方からコメントもらうと嬉しいです。
先生は患者さんの命日も憶えてらしてすごいです。こんな先生がいたら患者やその家族はとても嬉しいし励まされます。
絢瀬は先生のいた琉球大学病院でお世話になってました。最初は18tということで積極的治療をしない方針だったので不満がありましたが、途中から「一緒に頑張ろうね」といわれ救われました。
助からない命でも、患者や家族と先生と一緒に頑張っていく気持が大切なんです。
先生これからもがんばってください(^^)V
先生のブログ、リンクしてもいいですか?
絢瀬のママです。
医療関係者の方からコメントもらうと嬉しいです。
先生は患者さんの命日も憶えてらしてすごいです。こんな先生がいたら患者やその家族はとても嬉しいし励まされます。
絢瀬は先生のいた琉球大学病院でお世話になってました。最初は18tということで積極的治療をしない方針だったので不満がありましたが、途中から「一緒に頑張ろうね」といわれ救われました。
助からない命でも、患者や家族と先生と一緒に頑張っていく気持が大切なんです。
先生これからもがんばってください(^^)V
先生のブログ、リンクしてもいいですか?
Posted by あやせママ
at 2010年01月13日 17:16

samura 様♪
とても解り易く、勉強になりました。
感謝。 拝
とても解り易く、勉強になりました。
感謝。 拝
Posted by 知念まっつぐ
at 2010年01月13日 20:53

とても興味深いお話で、
特に視覚にかかわる事は広義に、
絵画にも関連する事で、空間の認識については、
いつも絵画教室での頭痛の種です。
ワタシ左利きの上、左耳難聴で偏頭痛持ちなものですから、
そのあたりでも参考になりました。
もっとも「心筋梗塞」になってから何故か偏頭痛が無い、、、、
なぜだろう、、、、。
カワウソ
特に視覚にかかわる事は広義に、
絵画にも関連する事で、空間の認識については、
いつも絵画教室での頭痛の種です。
ワタシ左利きの上、左耳難聴で偏頭痛持ちなものですから、
そのあたりでも参考になりました。
もっとも「心筋梗塞」になってから何故か偏頭痛が無い、、、、
なぜだろう、、、、。
カワウソ
Posted by ネコとウソ
at 2010年01月14日 22:28

あやせママさん、ご訪問ありがとうございます。
また、貴重なコメントをありがとうございます。
わたくしども医療従事者は患者さんやご家族の味方であり、我々の共通の敵は「病気」そのものであるはず!なんですが、時として病気が良くならないことや、癌などの勝てる見込みの無い状態であることなどから、患者さんやご家族が医療従事者を敵として誤認してしまうことがあります。私も何度も経験ありますが、対応が難しいですし正直辛いです・・・。
やはり、一緒にがんばっていく気持ちが大切だと思います。
リンクOKですので、どうぞ宜しくお願い致します。
また、貴重なコメントをありがとうございます。
わたくしども医療従事者は患者さんやご家族の味方であり、我々の共通の敵は「病気」そのものであるはず!なんですが、時として病気が良くならないことや、癌などの勝てる見込みの無い状態であることなどから、患者さんやご家族が医療従事者を敵として誤認してしまうことがあります。私も何度も経験ありますが、対応が難しいですし正直辛いです・・・。
やはり、一緒にがんばっていく気持ちが大切だと思います。
リンクOKですので、どうぞ宜しくお願い致します。
Posted by samura
at 2010年01月15日 12:41

知念まっつぐさん、返事が遅くなり失礼しております。
明日はアルツハイマー病の特徴についても書こうと思いますので、また読んで下さいね。
明日はアルツハイマー病の特徴についても書こうと思いますので、また読んで下さいね。
Posted by samura
at 2010年01月15日 12:42

カワウソさん、貴重なコメントをありがとうございます。
人間の脳は左が優位半球で、利き腕である右手を支配するのも左脳ですが、時々右脳が優位半球の方がいらっしゃいます。カワウソさんは左利きだと言うコトですので、もしかしたら右脳が優位半球になっているかもしれませんね。どちらが優位半球かを調べる検査もあるんですが、これについてはまた今度書きたいと思います。
「心筋梗塞になってから偏頭痛がない」理由は、私にはよく分かりません。調べてみます!
人間の脳は左が優位半球で、利き腕である右手を支配するのも左脳ですが、時々右脳が優位半球の方がいらっしゃいます。カワウソさんは左利きだと言うコトですので、もしかしたら右脳が優位半球になっているかもしれませんね。どちらが優位半球かを調べる検査もあるんですが、これについてはまた今度書きたいと思います。
「心筋梗塞になってから偏頭痛がない」理由は、私にはよく分かりません。調べてみます!
Posted by samura
at 2010年01月15日 12:46
