Dr.さむらのハイパー気まぐれ日記

さむら脳神経クリニックから脳の健康について書いていくつもりですが・・・。

飛行機に乗っても被爆するの?

水曜日にガンマセンターへ行きましたら、スタッフの皆様方が放射線の被曝量についてなにやら話していました。

「えぇ〜っ、胸のレントゲン撮るより、飛行機に乗る方が被爆するの〜???」みたいな声が聞こえてきます。

んん〜、確かに難しい問題だ。外来診察の時にも、「1ヶ月で3回レントゲン撮ったけど大丈夫ですか?」なんてご質問を受けることがありますもの。そこで今日は、そのあたりをかみ砕いて説明してみたいと思います。

まず放射線の単位ですが、Gy(グレイ)とSv(シーベルト)がありますが、意味合いは違いますがほぼ同じ量だと考えて下さい。

 1Gy ≒ 1Sv

 1Gy = 1000mGy

 1mGy = 1000μGy

また、自然の放射線が絶えず我々の身体に降り注いでいることも、忘れないようにしましょう。これには、宇宙線、大地からの放射線、空気中の放射線、食物からの放射線等があり、世界平均で年間2.4mSvの放射線を被曝していると言われています。日本では、岐阜県、香川県が最大で約1.18〜1.19mSv、神奈川県が最小で0.81mSvだそうです。

次に、各組織の放射線感受性ですが、リンパ組織、骨髄、生殖腺(卵巣、精巣)は感受性が高く、筋肉、結合組織、骨などは感受性が低い組織となっています。放射線は細胞のDNAを傷つけてしまいますので、活発に細胞分裂を繰り返し増殖する組織は感受性が高く、ほとんど細胞分裂しない組織は、感受性も低いわけです。ですから、全く細胞分裂しない神経組織(脳や脊髄)は放射線感受性が最も低く、ガンマナイフで20Gyとかトンでもない高線量を一気にかけてもへっちゃらなんですね。と言うことで、最も放射線に弱い組織は、器官形成期と言われる胎生3ヶ月までの胎児です。特に胎生2週までの胎児がある程度の線量を被爆してしまうと流産の危険が生じますし、2〜8週までですと精神発達遅滞や形態異常(奇形)の危険が高くなります。

ある程度の線量と言いましたが、放射線障害が生じる最小の線量のことを「しきい線量」と読んでいます。小難しい定義がありますが、とりあえずこれ以下の被曝量であれば、放射線障害は生じないとお考え下さい。

で、胎児への影響で言いますと、流産のしきい線量は100mGy。形態異常のしきい線量は100mGy。精神発達遅滞は120mGyとされています。これって実は、かなりの高線量なんです。ちなみにガンマナイフ治療の場合、脳全体への被曝量は1日3Gy以下に抑えるようにしています。脳って、放射線に対してとてつもなく強い抵抗力を持っていることが御理解頂けると思います。

さて、実際の例ですが、胸部レントゲンを1枚撮ったとしますと胸部への被爆は0.161mGy、卵巣や子宮への被爆は0.000mGyとなるそうです。胎児のしきい線量である100mGyには、遠く及びませんね。

では、航空機はどうでしょう?那覇空港から東京羽田空港まで2時間半の空の旅を楽しんだとします。上空12000mを飛行している時間を2時間としますと、被曝線量は約0.01mGyとなります(なるそうです)。胸部レントゲンを1枚撮影した時の、肺への被曝量には及びませんが、卵巣や子宮への被曝量よりははるかに大量に被爆しています。しかしそれでも胎児の閾値100mGyにははるかに及びません。

いかがでしょうか?

レントゲン検査って、ものすごく安全性の高い検査だってコトが、おわかり頂けたのではないかと思います。




vol.24
患者さんについて求めること

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この記事へのコメント
samura先生

こんにちは~

被爆ですか?

知らないよりは知っていた方が、良いと思いますが、余り神経質にならない方が良いのででしょうね!(笑)

岐阜と香川が放射線が強く神奈川が弱いというのが???
興味があります。o(^-^)o
Posted by yukuru mama at 2009年12月10日 12:10
はじめまして♪
足あとから来ました(#^-^#)
レントゲン検査の不安がなくなりました。

あっ、誕生日が一緒みたいです(^O^)
Posted by ayame at 2009年12月10日 12:12
先生こんばんわ^^

レントゲンがそんなに危険ではないというのはビックリです。
Posted by 龍帝 at 2009年12月10日 22:23
samura先生 こんばんは~~

2週間前に胸のレントゲンを撮ったばかりで…明日 人間ドックでまた胸の
レントゲン捕りますが大丈夫なんですね~~

先生の嫌いな胃カメラもやりますよ~~浦添総合病院がかなり先まで予約
がとれなかったので…近所でもある同仁病院でやります…
胃カメラ…技師の腕でだいぶ苦痛が変わるようですが…ちょっと不安です

大腸カメラはしませんが母が大腸ガンを患ったので…近いうちやりたいです
東京の東大病院のすぐ近くに胃カメラと大腸内視鏡の専門病院があり上手だと聞いていますが…里帰りに合わせて検査しようか?沖縄で大腸内視鏡検査をうけようか…考えています
県内に評判の良い病院あるでしょうか?
Posted by にゃん社長にゃん社長 at 2009年12月10日 23:22
yukuru mamaさん、おはようございます。
コメントありがとうございます。

おっしゃるように、被爆の問題はあまりナーバスになる必要は無さそうです。骨盤のレントゲンを撮ったとしても、胎児のしきい線量にははるかに及びませんし。
Posted by samurasamura at 2009年12月11日 09:19
ayameさん、はじめまして。
コメントもありがとうございます。

レントゲン撮影の被曝量は、実際見てみるとたいしたことはないのですが、やはり出来るだけ被爆しない方がいいですよね。

誕生日、5月3日なんですね!
Posted by samurasamura at 2009年12月11日 09:24
龍帝さん、おはようございます。

大量被爆は大変な副作用を残します。
放射線の恐ろしさは、何年か経てばその生物学的効果が消えるわけでは無いと言う点です。DNAに刻み込まれた放射線による傷は、孫子の代まで残り伝わっていきますから。原爆2世とか原爆3世って言葉があることからも、理解出来ると思います。

放射線の利点と欠点を充分理解して医療に応用すれば、放射線の危険性も充分少なくすることが出来ると思います。
Posted by samurasamura at 2009年12月11日 10:47
にゃん社長さん、こんにちは。

私は以前、あさと大腸・肛門クリニックで大腸ファイバーと胃カメラやってもらいました。大腸ファイバーは、全く苦痛を感じませんでしたが、胃カメラはかなりきつかったです。

私の場合、胃カメラは誰がやっても同じかも(泣)。
Posted by samurasamura at 2009年12月11日 11:21
はじめまして、こんばんは。

先ほど、友人から電話で明日、大腸ポリープの
検査をするとの事でびっくりしています。
かなりきつい検査なのでしょうか?
Posted by さくら貝さくら貝 at 2009年12月11日 22:01
さくら貝さん、はじめまして。

大腸ファイバーはきつい検査ですが、充分鎮静をかければ大丈夫だと思いますよ。どっちかと言うと、検査の準備で飲む下剤の方がきついかもです。
Posted by samurasamura at 2009年12月12日 18:34
 
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