反復性過眠症

samura

2010年05月10日 01:14

だいぶ前のことですが、中学生の男の子がご両親と一緒に私の外来にご相談にみえました。

他の病院やクリニックをいくつか回ったようで、「インフルエンザ脳症」とか「なんとか脳炎」とか、いろいろな難しい病名が付けられていますが、確診には至っておらず私に意見を聞きたいと言うコトで来られているのです。

症状はと言いますと、寝るんだそうです。人間誰でも1日数時間は睡眠をとりますが、この子は時々過眠傾向が出現し、1日10数時間も眠り続けるんだそうです。最初風邪をひいたのか熱を出した後に、場所や時間、家族の顔も分からなくなるような状態となり、1日10数時間も寝るようになったのだとか・・・。ところが1〜2週間すると症状がケロッと良くなってしまったそうです。学校の成績も良く、クラブ活動も頑張っているのですが、熱を出した後に1〜2週間ほど同じ様な症状が続くのだそうです。こういうエピソードを繰り返し、まだ診断が確定していない為あちこちの病院で受診しているというわけです。

当時私は、ガンマナイフで脳腫瘍の治療ばっかりやってました。こんな事を言うと偉い先生方からお叱りを受けそうな気もしますが、私たち脳外科医は頭の中に何か悪いものがあれば手術で頭を開けその病変を取って治療しようと言う、ある意味えらい単純な事をやってる集団です。ガンマナイフにしても、画像で見える病変をターゲットにして照射するわけですから、当時の私は見える病変だけを相手にする、言わば最も単純な医者だったわけです。患者さんはあちこちの病院で検査を行っていて、脳内に腫瘍性病変などの見える異常が無いことは分かっていたのですが、なぜに単純作業の最先端にいる私のトコなんかに来られたのか、未だに???です。

それはそうと、ご指名を受けたからにはなんとしてでもご期待にお応えしたいと思いまして、いろいろ話を伺いますとどうも何らかの睡眠障害を来している様に思えました。更に調べまして、「反復性過眠症」という非常に希な睡眠障害を発症しているのではないかと言う結論に達しました。上述の症状が、同疾患の症状とクリソツなんです!

10代で発症することが多く、薬の治療もあるのですが、20〜30代になると自然治癒することが多いので、過眠発作を起こさないために体調管理(特に風邪をひいて熱を出さないよう)をしっかりとやって頂くようお話し致しました。

あれから数年経ちまして、先日患者さんの叔母様が別件でいらっしゃいました。その時のお話では、今はほとんど過眠発作は無いというコトでした。

よかった、よかった。それにしても不思議な病気があるものですねぇ・・・。

関連記事