日本人の繊細な感性とうつ病の関係とは?セロトニンと遺伝子がもたらす特性

samura

2024年11月05日 06:03

本人が大切にする「繊細な感性」や「他者への配慮」。自然を慈しむ気持ちや細やかな心遣い、おもてなしの精神など、世界的に評価される日本人の特性には、遺伝的な要素が影響しているかもしれません。この記事では、うつ病とセロトニンの関係を理解し、日本人が持つ遺伝的な特徴がうつ症状や繊細な感性にどう影響しているのかを解説します。



うつ病に関係する「セロトニン」とは?
うつ病は、ストレスや生活環境、遺伝的要因が複雑に絡み合うことで引き起こされるとされていますが、その発症には脳内のセロトニンという神経伝達物質が大きく関係しています。

セロトニンは、感情や気分、睡眠、食欲の調整に欠かせない重要な役割を果たしている物質で、一般的に「幸せホルモン」として知られています。セロトニンの分泌が安定していると気分が落ち着きやすく、ストレスにも対処しやすくなります。しかし、うつ病の患者さんでは、セロトニンの分泌や働きが低下しているケースが多く見られ、気分の低下や無気力感が現れやすくなるのです。



シナプス間でのセロトニン減少がうつ病に影響を与える
脳内でセロトニンが情報を伝える仕組みを簡単に説明しましょう。セロトニンは、シナプス間隙という神経細胞間の隙間に放出され、次の神経細胞の受容体と結びつくことで情報を伝えます。この過程でセロトニンがシナプス間に適度に留まっていると、気分が安定しやすくなるのです。

しかし、うつ病ではこのシナプス間隙でのセロトニン量が減少している場合があります。シナプス間隙でのセロトニンが減少する原因としては、次の3つが考えられます。

1. セロトニンの分泌低下
脳内でセロトニンが十分に分泌されない状態です。セロトニンが放出されなければ、シナプス間隙でのセロトニン量が不足し、情報伝達がうまく行われなくなり、気分が落ち込みやすくなります。

2. 過剰な再取り込み
セロトニンが放出された後、セロトニントランスポーターというタンパク質がセロトニンを再取り込みし、元の神経細胞に戻します。通常の状態では適度に再取り込みが行われ、シナプス間隙でのセロトニン量が保たれていますが、うつ病ではこの再取り込みが過剰になることがあり、シナプス間隙でのセロトニン量が不足してしまいます。

3. セロトニン受容体の異常
セロトニンを受け取る受容体に異常があると、セロトニンが十分にシグナルを伝えられません。セロトニンがシナプス間隙に存在していても受容体が機能しないため、気分や感情を調整する作用が十分に発揮されなくなります。



抗うつ薬の働きと効果
うつ病の治療では、こうしたセロトニン不足の原因に合わせた抗うつ薬が使われます。代表的な薬を紹介します。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
SSRIは、セロトニントランスポーターの働きを抑え、過剰な再取り込みを抑制する薬です。シナプス間隙にセロトニンをとどめて、気分の安定を促します。SSRIは、セロトニンに特化して働き、比較的副作用が少ないため、うつ病の第一選択薬として広く使用されています。

SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
SNRIは、セロトニンだけでなくノルアドレナリンの再取り込みも抑えます。ノルアドレナリンは意欲や覚醒状態に関わるため、気分の改善だけでなく意欲や集中力の向上も期待できます。

三環系抗うつ薬
三環系抗うつ薬は、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを同時に阻害しますが、他の受容体にも作用するため、口渇、便秘、めまいなどの副作用が出やすいです。場合によっては三環系抗うつ薬が有効なケースもあり、使い分けが行われています。



日本人とセロトニントランスポーター遺伝子のS型
抗うつ薬の効き方やうつ病の発症には、セロトニントランスポーター遺伝子も関わっていると考えられています。この遺伝子にはL型(long型)とS型(short型)があり、日本人の約7割がS型を持っていると言われています。S型は、ストレスへの感受性が高く、ストレスや感情の揺れに敏感な傾向があるため、うつ病や不安障害になりやすいと言われています。

また、S型は、セロトニンの再取り込みが十分に行われず、うつ症状のリスクが高くなることがあります。こうしたことから、日本人の多くが持つS型遺伝子は、ストレスや環境の変化に対する感受性の高さにつながっていると考えられています。



S型遺伝子が日本人の感性や文化に与える影響
S型遺伝子が持つストレス感受性の高さは、うつ病のリスクだけでなく、日本人が持つ繊細な感性や文化にも影響を与えていると考えられます。

繊細な自然観
日本人は、四季折々の自然の移り変わりに敏感で、春の「木漏れ日」、秋の「時雨」など、自然の中の微細な変化を多くの言葉で表現します。これらの言葉には、天候や情景だけでなく、自然に寄り添う気持ちや感情が込められています。S型遺伝子を持つ日本人は、こうした細やかな自然の変化に敏感に反応し、豊かな言葉や表現で情感を表してきたのでしょう。

他者への配慮やおもてなしの精神
S型遺伝子が持つ感受性は、他者への気遣いや配慮にもつながっています。日本人が大切にする「おもてなしの精神」や「空気を読む」といった文化も、他者の気持ちや状況に敏感であるS型遺伝子が影響しているのかもしれません。ストレスや感情の変化に敏感な日本人は、自然と相手の気持ちを察し、柔軟に対応する文化を築き上げてきたと考えられます。

S型遺伝子の特性を生かした生き方とは?
S型の特徴は、うつ病のリスクを高める要因になる一方で、日本人特有の文化や感性を形作る大切な要素ともなっています。繊細な感性や他者への配慮は、国際的にも評価されており、日本文化の美意識や精神性を支えています。

そのため、自身の感受性を前向きに捉え、ストレスの多い環境では無理をせずに自分を労わることが重要です。日々の生活の中で自分に合ったリラックス法やストレス管理法を見つけることで、S型の特性を生かしながら充実した日々を送ることができるでしょう。



まとめ
セロトニンとセロトニントランスポーター遺伝子は、うつ病の発症に関わるだけでなく、ストレスや感情の揺らぎに対する日本人の特性にも影響を与えています。日本人の多くが持つS型遺伝子は、繊細な感性や豊かな表現力を生む一方で、ストレス感受性を高める要因ともなっています。

自分の特徴を理解し、ストレスと向き合うための対策を講じることで、繊細な感性を大切にしながら心豊かな生活を送ることができるでしょう。

関連記事