骨縫合と縫合早期癒合症
昨日水頭症の記事を書きながら、途中で困ってしまいました。
「小児の場合、頭蓋骨が完全に癒合する前に・・・」と書きながら、これだけじゃあ理解出来ないだろうなぁと思い、頭蓋骨の形成に関して補足説明をすることにしました。
頭蓋骨は脳を保護する大切なバリアの役目を果たしていますが、最初から硬い一枚の構造なのではなく、いくつかのパートに分かれ産道を通過する際や脳の成長に合わせ徐々に硬く癒合していき、最終的に一枚の硬い頭蓋骨になるのです。赤ん坊の頭頂部を触ってご覧なさい。ペコペコと柔らかい骨のない部分があるでしょ。あれは大泉門と言って、頭蓋骨が癒合する前の骨と骨の間の隙間です。成長に従って骨性分が増殖し大泉門は閉まっていくんですが、大泉門以外にも骨と骨の間には隙間があり成長に伴って徐々に癒合し大人の頭蓋骨が形成されていくのです。
骨と骨の間の隙間を骨縫合(こつほうごう)というのですが、骨縫合が癒合する前に頭蓋内の圧が上昇した状態になると、縫合同士が押し広げられなかなか癒合出来ず頭蓋骨自体が大きく成長してしまうのです。小児水頭症の場合、骨縫合の癒合時期が正常より遅れてしまうコトがあるわけですね。
ところが、この骨縫合が正常より早くなってしまう病態が存在します。これを、頭蓋縫合早期癒合症と言います。骨縫合が正常より早く癒合するわけですから、水頭症の大きな頭とは逆に頭蓋の容積が小さくなってしまうので、狭頭症とも言われます。なぜ骨縫合が早期に癒合するのか、原因は全く分かりません。
早期に癒合する縫合の種類によって、頭の形が違ってきます。例えば矢状縫合という左右の頭頂骨を正中部で繋ぐ縫合が早期に癒合すると、頭は前後方向に長い形になっていきます。一種の代償機転が働いているものとも思われますが、極端な話エイリアンみたいな前後に長い頭になるわけです。だからと言ってど〜ってコトないんですが、前頭縫合という骨縫合が早期癒合を来した場合、前頭部の成長が妨げられてしまいます。前頭縫合の早期癒合症を三角頭蓋というのですが、これはちょっと困ります。なぜなら、前頭骨が充分発達してくれないと、この部に治まる脳のパートも成長が妨げられるからです。前頭骨の部分には、前頭葉という思考や認知機能に関係した、動物の中でも人間で最も発達した脳の大切な構造が収まっていますので、前頭葉の発達が抑えられると、発達障害を引き起こす可能性も出てくるのです。
治療は、早期癒合を生じた骨縫合を切り開き、頭蓋骨が正常に成長するようにしてあげることが大切ですが、脳の成長を考えると出来るだけ早い時期、出来れば2歳までに手術することが推奨されています。
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