中性脂肪が高い方の注意点

samura

2023年08月13日 19:49

性脂肪が高値の患者さんに対する食事や生活指導において注意すべきポイントは以下の通りです。

1. 食事内容の見直し
高糖質な食品:白いご飯や白パン、スナック菓子、甘い飲み物やお菓子などを減らしましょう。
脂肪の摂取をバランスよく:魚やオリーブオイル、ナッツなどの良質な脂肪を適切に摂取し、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取は控えましょう。



2. アルコールの摂取を減らす:特にビールや甘いアルコール飲料は注意です。

3. 食事の方法・頻度
大量に一度に食べるのではなく、小分けにして数回に分けましょう。
夜遅くの、食事や飲酒は避けましょう。

4. 適度な運動
ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動を週に数回、各回20〜30分程度がお勧めです。
運動の際には、強度を徐々に上げることを意識し、無理をせずに継続することが重要です。

5. 生活習慣の見直し
喫煙は動脈硬化を促進するため、中性脂肪の上昇と相まって心血管疾患のリスクが高まります。喫煙をしている場合は、禁煙しましょう。
ストレスは適切に管理し、リラクゼーションや趣味を見つけるなどの方法でストレスを緩和しましょう。

6. 体重管理
適切なBMIを目指して、必要に応じて減量しましょう。

7. 定期的な健康診断
中性脂肪の数値だけでなく、他の健康指標も含めて定期的に健康診断を受けることは重要です。

8. 薬物療法の考慮
ライフスタイルの変更だけで中性脂肪値が下がらない場合、医師の指導のもとで薬物療法を検討しましょう。

食事内容と食事の方法について、もう少し詳しくみてみましょう。

1. 糖質としての白いパンやご飯、パスタ
白いご飯やパン、パスタなどの食品は炭水化物の主要な源で、炭水化物が体内で糖分に変わり、それがインスリンの作用で細胞に取り込まれます。特に、これらの精製された炭水化物は急激に血糖値を上昇させる傾向があり、その結果として過度なインスリンの分泌と中性脂肪の生成が促されます。

2. 果物について
果物は確かにビタミンやミネラル、食物繊維を豊富に含んでいるので、健康的な食品であるとは言えます。しかし、果物に含まれる果糖も、過剰摂取すると肝臓で中性脂肪に変わるリスクがあります。特に果物ジュースなど、繊維が取り除かれた形での摂取は注意が必要です。全体としては、適量を守り、全果実の形での摂取を推奨し、ジュースの摂取は控えめにしましょう。



3. 糖質の摂取量
一般的に、1日のエネルギー摂取の50〜60%を炭水化物から摂取することが推奨されていますが、中性脂肪が高い、またはインスリン抵抗性が考えられる場合、この比率を減らすことも考えられます。具体的な数値としては、個人の状態や目的に応じて調整が必要ですが、糖質制限を行う場合は、炭水化物の摂取量を1日のエネルギーの40%以下、さらに強く制限する場合には20-30%程度にするという方法があります。ただこの場合、脂肪の摂取量が増えてしまうため、実践する際には専門医と相談することをお勧めします。

4. 合成甘味料の影響
合成甘味料はカロリーが低いか、ゼロであるため、直接的に中性脂肪の増加に寄与するわけではありません。しかし、甘味を感じることでの食欲刺激や、腸内細菌叢への影響など、間接的な影響が考えられるため、過度な摂取は控えるべきです。合成甘味料に関する研究は、その影響に関してまだ完全には結論が出ていない部分も多いですが、一部の合成甘味料がインスリン応答に影響を及ぼす可能性が示唆されている研究も存在します。

5. 食べ方に関して
ゆっくりと噛むことで、消化酵素の分泌が促され、食事の満足度も高まります。また、食事に時間をかけることで、食べ過ぎを防ぐことができる効果もあります。食べる順番としては、先に野菜やたんぱく質を摂取し、最後に炭水化物を摂取することで、血糖値の急激な上昇を緩和する効果が期待できます。



次に、中性脂肪とインスリンの関係について説明します。

1. インスリンの主要な役割
インスリンは、血糖値を下げるホルモンとして知られていますが、それだけではなく、脂肪組織において脂肪の分解を抑制する役割も果たしています。

2. インスリン抵抗性
生活習慣、遺伝、肥満などで、インスリンの効果が低下すると、体はこの低下した効果を補うためにさらに多くのインスリンを分泌します。これが高インスリン血症を引き起こすことがあります。

3. 中性脂肪とインスリン
高インスリン血症の状態では、インスリンの作用により脂肪組織のリパーゼの活性が抑制されるため、脂肪の分解が抑えられ、結果的に中性脂肪が増加します。

4. さらなる悪循環
中性脂肪が増加すると、これがインスリン抵抗性をさらに増悪させる可能性があります。また、脂肪組織からの炎症性サイトカインの分泌や肝臓での脂肪蓄積がインスリン抵抗性の原因となることも知られています。

5. リパーゼの効果
リパーゼは脂肪の分解を促進する酵素であり、高インスリン血症の状態ではこのリパーゼの活性が抑制されるため、中性脂肪の分解が抑えられ、血中の中性脂肪が増加すると考えられています。



高中性脂肪血症は、糖尿病や肝機能障害、脂肪肝の危険が増加することは確かですが、それだけでなく、他の健康問題も引き起こすリスクがあります。

1. 異所性脂肪蓄積
異所性脂肪とは、脂肪が通常蓄積される場所、つまり皮下脂肪組織以外の場所、特に内臓や筋肉内に蓄積する脂肪を指します。異所性脂肪蓄積は、中性脂肪が高い状態でより顕著になります。特に、筋肉、肝臓、心臓、膵臓などに脂肪が蓄積することが知られています。

2. 異所性脂肪の悪影響
筋肉:筋肉に脂肪が蓄積することでインスリン抵抗性が進行する可能性があります。

肝臓:すでに触れた通り、肝臓に脂肪が蓄積すると脂肪肝が発症し、長期的には非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)や肝硬変、さらには肝臓がんへの進行リスクが高まります。

心臓:心臓に脂肪が蓄積することは、心機能の低下や心疾患のリスクを高める可能性があります。

膵臓:膵臓に脂肪が蓄積することで、インスリンの分泌が障害される可能性があります。

心血管疾患のリスク:高い中性脂肪は、動脈硬化や心血管疾患のリスクを高める可能性があります。

脳血管障害:高い中性脂肪は、脳血管障害のリスクも高めると考えられています。

炎症反応:高中性脂肪状態は、体内の炎症反応を引き起こす可能性があり、これが様々な疾患の原因となることもあります。特に注意すべきものは、以下の3つです。

1. 動脈硬化に関連する炎症
動脈硬化は、心臓や脳の血管障害の主要な原因となり、心筋梗塞や脳梗塞などの危険が高まります。

2. 肝臓の炎症と線維化
慢性的な脂肪肝は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)へと進行することがあります。これは、肝線維化や肝硬変、さらには肝臓がんのリスクが高まる状態です。

3. 慢性的な軽度の全身炎症
これは、糖尿病、心血管疾患、ある種のがんなどの慢性疾患のリスクを高める要因となる可能性があります。

血液検査の際の中性脂肪の値は、食事の内容や摂取時間に大きく影響されるため、正確な測定を求める場面での採血は空腹時が望ましいです。値が高く出たからといってすぐに治療や大きな生活改善を迫るのではなく、再検査や数回の平均値をとるなどして、実際の状況を確認することが重要です。



関連記事